Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとうとうこうき
比島投降記
石川 欣一
Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme
疲労困憊している人間に優しい言葉をかけると、ガックリ行ってしまうといって態々激しい言葉で叱り飛ばすということは聞いているが、この軍医殿のは、そんな風に「気合をかける」のとは違い、単に将校対兵隊の馬鹿威張りを一歩も出ていない。米軍の給与を受け、身体も丈夫な――しかも時々、給与のビスケットでは足りないなどと、僕に文句をいった――人間が、立っていることもようやくと思われる人間に、こんな意味のない威張り方をすると、僕は実に腹が立つのだった。
患者の水浴から話が横にそれた。われわれは二時になると、ほとんど裸体になって柵内に並び、番号をとった上で、正門を出て海に入る。米国の兵隊が小銃を持って見張っているが、それはわれわれが逃げるのを防ぐよりも、比島人が悪さをするのを防ぐためであった。砂浜はきれいだし、海もきれいだし、遠く近くに浮ぶ島々を見て、大きな波に打たれながら、身体を洗ったり、洗濯したり、泳いだりするのは、すこぶる快適だった。ただし塩水で、あとがべとつくことは、やむを得なかった。
ところが、ラロから婦女子が移って来るにおよんで、水浴が問題になった。時間は午前十時、場所は病院から五、六町西へよった所、と決めたG中尉は、「警備の兵は、一同が水浴している間、陸の方を向いているべし」