Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとうとうこうき
比島投降記
石川 欣一
Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme
といって聞かせると「そうでしょうか。お願いします」と、静かになるのである。「あれも人の子樽ひろい」というが、妻子もあるに違いない老兵が、痩せた股と脚を撫でながら、それが無くなってしまったなどというのを、黙って聞いている訳には行かない。
だいぶん後の話だが、中部ルソンから東海岸をめざして山の中に逃げ込んだ兵隊が、多い時は十数名、すくない時は三、四名と、収容所に現れるようになった。われわれみたいに、団体として、米軍と打合せて投降したのではないから、諸所方々で持っている物を取られたり、食物と交換したり、それだけでも惨憺たるものだが、多くは栄養不足と病気とで、見る影もない哀れさである。中には即刻入院させねばならぬ人がいるのだが、その判断がわれわれにはつかぬので、軍医に見て貰うことにした。すると、一人の軍医は、何と思ってか、ひどく乱暴な口を利くのである。部隊はどこだとか、階級は何だとか、簡単なことを質問されても、頭がボンヤリしているのでとんちんかんな返事をするのがいる。「何をいうのか。誰がそんなことを聞いているか」とか「この間抜野郎」とか、聞く僕としては、医は仁術であっても、兵隊に対する軍医は、すくなくとも、このM大尉は、断じて仁者ではないことを、しみじみと感ぜざるを得なかった。