Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

この子この父

孤寂にうるんだいとも淋しげな眸であった。いつか、四山の峰の襞は、ふかい暗紫色を彫りこんで、水の見えない琵琶湖の方に、厚ぼったい雲が下がっていた。

西側の窓の方からは、遥かに、京都の町の灯がチラチラ見える。郷左は、畳に貼りついた蜘蛛のように、いつまでも、顔を伏せていた。そのまに、蘭之助、杉太郎と呼ぶ愛くるしい小姓が二人して、机のそばの金行燈へ灯を点した。

ギリギリギリと何処かで時計が鳴る。

「郷左、退がれ」

老公は立った。蘭之助、杉太郎の二人に手燭を持たせて、静かに、次の間の書庫へ書を取りにはいられた。

この子この父

「稀々のお召しというやつがないと、ここにいても、随分わるくはないが、あれが、苦手じゃて」

湯から上がって、軽い着流しで寛いだ郷左衛門は、仮面を摺りかえたように変って、あたかも、この含月荘の主のように、傲然とつぶやいていた。

山の屋敷にしては、贅沢な膳部が、燭の媚に見まもられていた。側には、彼の子のすこし出来の悪い主水が、時々、玉枝の顔ばかり見ながら、銀の銚子をとって、父の酌をしていた。

「亀山のご城内とちがって、こちらの方には、美しい女中達がおりませぬから、それでお父上は気づまりなのでございましょう」