Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme

Aozora Bunko

おそよはそのゆくえを見定めようとして井戸のそばへ寄って見おろすと、蝶の姿はもう見えなかった。水に落ちてしまったのかと、じっと底の方を覗いていると、水のうえに二つの美しい男の顔が映った。おどろいて左右を見返ったが、あたりには誰もいない。ふたつの蝶が二つの男の顔に変ったわけでもあるまい。不思議に思っていつまでも覗いていると、その男の顔はこっちを見あげてにっこりと笑ったので、おそよはぞっとして飛びのいた。

しかし薄気味の悪かったのは単にその一刹那だけで、おそよは再びその美しい男の顔が見たくなった。かれは左右を窺いながら、抜足をして井戸のそばへ立ち寄って、そっと水の上を覗いてみたが、男の顔はもう浮かんでいなかった。おそよは言い知れない強い失望を感じて、すごすごとそこを立去ったが、あくる日ふたたびその井戸端を通ると、かれは今日もその上にふたつの蝶のもつれて飛んでいるのを見た。蝶はどこへか姿を隠してしまったが、おそよはその蝶のゆくえを追うようにきょうも井戸のなかを覗いてみると、二つの顔はまたあらわれた。おそよはいつまでも飽かずにその顔を見つめていた。

それが始まりで、おそよは一日のうちに幾たびかその古井戸をのぞきに行った。