Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme

Aozora Bunko

二

「まずこれでいい。」

みなも急に元気が出て、すぐにその蟹を茹ではじめました。

二

お酒が出る、お料理がだんだんに出る。主人も客もうちくつろいで、いい心持そうに飲んでいるうちに、かの蟹が大きい皿の上に盛られて、めいめいの前に運び出されました。

「さっきも申上げた通り、今夜の御馳走はこれだけです。どうぞ召上がってください。」

こう言って、増右衛門は一座の人たちにすすめました。わたくしの郷里の方で普通に取れます蟹は、俗にいばら蟹といいまして、甲の形がやや三角形になっていて、その甲や足に茨のような棘がたくさん生えているのでございますが、今晩のは俗にかざみといいまして、甲の形がやや菱形になっていて、その色は赤黒い上に白い斑のようなものがあります。海の蟹ではこれが一等うまいのだと申しますが、わたくしは一向存じません。

なにしろ今夜はこの蟹を御馳走するのが主人側の自慢なのですから、増右衛門は人にもすすめ自分も箸を着けようとしますと、上座に控えていましたかの坂部与茂四郎という人が急に声をかけました。

「御主人、しばらく。」

その声がいかにも子細ありげにきこえましたので、増右衛門も思わず箸をやめて、声をかけた人の方をみかえると、与茂四郎はひたいに皺をよせてまず主人の顔をじっと見つめました。