Japanische Klassiker mit Furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme
どうしたのかと訊いてみると、その仮面がどこへか消えてなくなったというのです。井田さんが戸をこじ開けてころげ出してから、夜のあけるまで誰もその離れへ行った者はないのですから、こっちのどさくさまぎれに何者かが忍び込んで盗んで行ったのかとも思われますが、ほかの物はみんな無事で、ただその仮面一つだけが紛失したのは、どうもおかしいと父は首をかしげていました。しかしいくら詮議しても、評議しても、無いものはないのですから、どうも仕方がございません。ただ不思議ふしぎを繰返すばかりで、なんにも判らずじまいになってしまいました。
けさになっても井田さんは、気分がまだほんとうに好くないらしく、蒼い顔をして早々に帰りましたので、父も母も気の毒そうに見送っていました。
それが因というわけでもないでしょうが、井田さんはその後間もなくぶらぶら病いで床について、その年の十月にとうとういけなくなってしまいました。その辞世の句は、上五文字をわすれましたが「猿の眼に沁む秋の風」というのだったそうで、父はまた考えていました。
「辞世にまで猿の眼を詠むようでは、やっぱり猿の一件が祟っていたのかも知れない。