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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme

Aozora Bunko

なぜ、こんなに急がねばならぬのか? 以前、学生の頃、一度神田から、友人と二人で酔興に高円寺まで歩いてみたことがある。三時間あまりかゝつた。戦場での、あの強行軍にくらべれば、なんでもない。彼は、荻窪に着くのが朝であろうと夜であろうとかまわぬ。ただ、家族のものが一人でも少い時がよい。一度に左右から質問を浴せられてはかなわぬという気がする。

が、そう思うしりから、彼の無事な顔を不意にみた家のものたちの驚喜、いそいそと、またおろおろと彼を迎える肉親の佯りのない表情が、想像できなくもない。

素直に、なによりも素直に、彼等の感情にこたえねばならぬ、と、彼は、一つ時、自分の今の気持をかえりみた。

そういえば、彼は、出征以来、実に稀れにしか家へ手紙を出していない。満洲時代に二度、華中ではたしか九江から一度、マレイ作戦に加つてからはずつと音信不通、仏印に落ちつくと、暇があり余るほどあつたのに、やつと二度、それも所属部隊名を略した絵はがきの程度であつた。

家からの便りは、それゆえ、太平洋戦がはじまると間もなく広東で受取つたきり、それが最後であつたから、一家をあげて父の郷里の宇都宮近在へ疎開しようとしている消息を知つているだけである。