Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
しかし、それを一概に、老年の物欲へ走つたものとみることはできなかつた。発育盛りの二男三女を抱えて、一家の経済は既に危急を告げていたのである。まずまず、善良な父であり、夫であつた。時に我田引水とみられる処世理論で、ねちねちと家人を悩ますことはあつても、決して荒い言葉で怒りを爆発させることはなく、家の掃除から、夜の読書まで、率先躬行をもつて、厳しく範を垂れ、自らそれをなによりのほこりとしていた。
数えてみると、今年はもう五十七になる。母は、生きているとすれば、五つ違いの五十二、七年前に、もう、父とおなじ半白の頭髪を、自分で染める気にもならぬらしかつた。なにごとにも目立たぬように気を配るのが特色で、父と並んで坐る時は、きつと、この蔭に半身をかくすほどであつた。よほどの必要がなければ、買物以外に外へ出たためしはなく、親戚のものでもなければ、客と対座するのが苦痛のようであつた。そのくせ、子供たちの面倒は至つてよくみる方で、男の子と女の子の区別を、些細なところまでちやんとつけ、男はまあしかたがないけれど、というのが口癖で、娘たちは、その点、母を旧式のこちこちと批難しながら、一方では、なんでもその母に倚りかゝつていた。