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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme

Aozora Bunko

そこまで来ると、もう彼の家の屋根が葉の落ちつくした桜の梢のかげから、ちらと見える。

彼は、ゴクリと唾を呑みこむ。やけに胸騒ぎがするのである。おかしなものだ、と、彼は思う。自分を変なやつだと叱りたいような不機嫌な気持である。彼は、やゝ古びた檜丸太の門柱に眼を注ぐ。たしかに、わが家へ辿りついたのだけれども、彼の足は、鎖がついているように重い。

門の扉は内側から閉まつている。開くまで待つか、ドンドンと叩くか、外から声をかけるかするよりしかたがない。呼鈴をなぜつけておかぬのか。

彼は、突嗟に、その門を乗り越えることを思いついた。なんでもないことであつた。玄関に呼鈴はついていたけれども、わざと勝手口へ回つてみた。と、そこには、手拭を頭にのせた母が、散らかつた薪屑を箒で掃き溜めているではないか。跫音で、彼女は、顔をあげた。

息づまるような一瞬の後、母の手から、竹箒がするすると地面にすべり落ちた。

「お母さん」

と、彼は、呼んだつもりである。喉がつまつて、その声はまともに出なかつた。

「兄さんじやないの……兄さんだわ……帰つて来た……帰つて来た……」

彼女は、そう言いながら、一歩一歩、彼に近づいて来た。