Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
「あの、あたくし、ぜひちよつと、こちらのご主人さまにお目にかゝりたいんでございますが……」
と、口ごもりながら、言つた。
「失礼ですが、どちらから……?」
「名前なぞ申しあげてもしようがございません。熊谷からとおつしやつてくださればわかります」
「あの、熊谷? どんなご用事か存じませんけれど、たゞいま、あいにく、出かけておりますんですが………」
「では、お帰りになるまで、こゝで待たせていたゞきます」
ものゝ二時間も、玄関の敷台に腰をおろしたまゝ、てこでも動こうとしないこの女を、母も、妹の多津も、うさんなという眼つきでみないわけにいかなかつた。それでも、妹の多津は、寒いだろうといつて、小火鉢と座蒲団を出し、しまいに、茶をいれてすゝめるというぐあいであつたが、やがて、それとは知らず、父の憲之が表をあけて、ひよつこり帰つて来た。
女は、起ちあがつた。父は顔色を変えて、コウモリ傘の柄を握り直した。
意外な、この男女の対面は、ちようど小門の開く音を聴いて出て来た母の視線からのがれることはできなかつた。
「なにしに来た」
と、父は、うろたえた拍子に、へたに一喝した。
「なにしに、ですつて……? お目にかゝらなければ、話がわからないからですわ」