Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
「えゝ、女学校だけでたくさんだつて、父がいうんですもの」
「あとはお嫁入りの仕度ですか」
「あたくしはそんなつもりじやないの。でも、自分でしたいことつて、なかなかできないわ」
「なにが一番したいんですか」
「…………」
その返事はついに聞かれなかつたけれども、彼はこうして、一週に二度、彼女を高円寺駅で待ちうけ、みちみち話をしながら、彼女をその門口まで送るという楽しみをかち得たのである。
たまには、待ちぼうけを喰うこともあつた。しかし、そういう日は、たいてい、彼女の家の二階の窓が開いていて、窓ぎわに彼女の笑顔がうつつていた。
半年はまたゝくうちに過ぎた。彼は学校をやめ、新しく勤めの身となり、味岡小萩を駅で待ち受ける度数も少く、ただ、その代り、駅以外の場所で時々は落ち合う機会ができ、そのうちに、自分の家へも誘い、また彼女の家へも二三度は顔を出したことがある。
それにしても、彼は、自分の感情を露骨に彼女の前に示したことはなく、彼女の方でも、およそそういうキッカケを彼に与える隙をみせなかつた。互いに好意以上のもの、友情というにはあまりに複雑な気持を感じ合いながら、もう一歩というところで、常に彼は踏み止まり、それが明らかにためらいにすぎないと知りながら、そのことに却つて自己抑制に似た誇りを意識して、自ら慰めるという風であつ