Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
従ってこの画は清浄な気分を印象し得たかもしれぬ。しかし浄土の幸福が現世の享楽の理想化に過ぎないという点は動かせない。
不完全な人間存在が完全な生への願望を含むところに深い宗教的な要求の根がある。それは官能的悦楽のより完全な充足を求める心としても現われ得るであろう。しかし人間の栄耀をかろしめるほどに深く思い入ったものが、――大臣の娘としての便宜と、美しい女としての特権とを捨離して顧みなかったものが、――それほど単純な心持ちでいたというのはおかしい。彼女の法悦を刺戟する手段としては、委曲をつくした浄土変よりは、一つの弥陀像、一つの観音像の方が有力であったろう。芸術として優れていることは法悦の誘導者としてもまた有力であったことを意味する。天平の彫刻が浄土変の類よりも重んぜられたのは理由のないことでない。
中将姫は確かに弥陀と観音とを幻視したかも知れぬ。しかしそれは伝説の示すとおり、曼陀羅の織り出される前であった。この曼陀羅のおかげではない。
天平時代後期に盛んに画かれた弥陀浄土変は恐らくこのようにごたごたしたものではなかったであろう。法隆寺壁画の阿弥陀浄土が、図様においてもほとんど比べものにならないほど簡素であることを考えると、当時の人がこの点に盲目であったとは思えない。