Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
あのうっとりと閉じた眼に、しみじみと優しい愛の涙が、実際に光っているように見え、あのかすかにほほえんだ唇のあたりに、この瞬間にひらめいて出た愛の表情が実際に動いて感ぜられるのは、確かにあのつやのおかげであろう。あの頬の優しい美しさも、その頬に指先をつけた手のふるいつきたいような形のよさも、腕から肩の清らかな柔らかみも、あのつやを除いては考えられない。だから光線を固定させ、あるいは殺し、あるいは誇大する写真には、この像の面影は伝えられないのである。
しかしつやがそれほど霊活な作用をなし得るのは、この像の肉づけが実際微妙になされているからである。その点でこの像は百済観音とはまるで違っている。むしろ白鳳時代のもののように、精妙な写実を行なっているのである。顔や腕や膝などの肉づけにもその感じは深いが、特に体と台座との連関において著しい。体の重味をうけた台座の感じ、それを被うている衣文の感じなど、実に精妙をきわめている。
わたくしたちはただうっとりとしてながめた。心の奥でしめやかに静かにとめどもなく涙が流れるというような気持ちであった。ここには慈愛と悲哀との杯がなみなみと充たされている。