Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
円く肉づいた頬は、肉感性の幸福を暗示するどころか、人間の淫欲を抑滅し尽くそうとするほどに気高い。これらの相好が黒漆の地に浮かんだほのかな金色に輝いているところを見ると、われわれは否応なしに感じさせられる、確かにこれは観音の顔であって、人の顔ではない。
この顔をうけて立つ豊かな肉体も、観音らしい気高さを欠かない。それはあらわな肌が黒と金に輝いているためばかりではない。肉づけは豊満でありながら、肥満の感じを与えない。四肢のしなやかさは柔らかい衣の皺にも腕や手の円さにも十分現わされていながら、しかもその底に強剛な意力のひらめきを持っている。ことにこの重々しかるべき五体は、重力の法則を超越するかのようにいかにも軽やかな、浮現せるごとき趣を見せている。これらのことがすべて気高さの印象の素因なのである。
かすかな大気の流れが観音の前面にやや下方から突き当たって、ゆるやかに後ろの方へと流れて行く、――その心持ちは体にまといついた衣の皺の流れ工合で明らかに現わされている。それは観音の出現が虚空での出来事であり、また運動と離し難いものであるために、定石として試みられる手法であろうが、しかしそれがこの像ほどに成功していれば、体全体に地上のものならぬ貴さを加えるように思われる。