Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
そうしてその弾力のありそうな、生気に充ちた膚肉の感じ。それをながめていると、顔面に漂うている表情から、陶酔にやや心を緩うしているらしい曇りのない快活な情緒が、しみじみ胸にしみ込んで来る。生きた人に間近く接した時感ぜられる、あの、生命の放出して来るような感じが、ここにも確かに存しているように思える。しかも相手が人間ではなくて彫刻であるために、そこに一味の気味わるさが付きまとっている。
そのときH氏が、その仮面をとって自分の顔の上につけた。この所作によって仮面は突然に異様な生気を帯びはじめた。ことに仮面をかぶったH氏が少しくその首を動かしてみたとき、顔面の表情が自由に動き出したかと思われるような、強い効果があった。わたくしは予期しなかったこの印象に圧せられて、思わず驚異の眼をみはった。
仮面を畳の上に横たえ、または手にとって自分の膝の上に置いた時には、それはその本来あるべき所にあるのではない。われわれはこれまで仮面をその作られた目的から放して、それだけで独立したものとして観察するに慣れていたのである。普通人の顔の四倍もありそうなその仮面を、人体と結びつけて想像することは、この驚異の瞬間まではわたくしには不可能であった。