Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
町へ入る少し手前の、切り通しの坂までくると自動車の窓から吹き入る風が、呼吸がつまるように臭いのだ。生まれてはじめて鼻が経験する臭いだ。町へ入ると家、道、庭木、草、川、人間、犬、電信柱なんでもかでも臭い。この臭いは何だと問うと、これは鯨の臭いだと友人は答える。
これはひどい。素晴らしい鮮鯨の肉は、こんな窒息的の臭いを出すものか。こんな訳なら遙々こんなところまでくるんじゃなかった。と言うと、友人は、いやこれは腐った鯨肉の臭いだ。鮎川の町の人はどの家でも膠や肥料をとるために鯨の肉を細かく刻んで、庭や路に乾して置くがそれが腐って、こんな臭いを発する。
それがために、あの臭いものなら何にでも集まってくる蝿でさえ、あまりにその臭いの強烈なのに驚いて、この鮎川の町から悉く逃げ出してしまった。けれど、いきのいい鯨肉は、こんなに臭いものではない。
二
それで安心した。
その夜半十二時、私らは第二京丸というキャッチャーボートに乗って鮎川港から金華山沖へ出た。三百二十トン、軽快な船である。
眼がさめると、朝七時。船は金華山から百二十五哩の太平洋を走っている。