Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme

Aozora Bunko

清十郎のねばり濃い求愛に、心が暗くなる時は、必ずその心のすみで、彼女は武蔵のことを考えた。――武蔵が心にあることは、救いであったが、また苦しくもなって来た。なぜならば、遮二無二に今の境遇を切り解いて現在の身から夢の中へ、駈け出してしまいたくなるからだった。

「……だけど?」

彼女は、しかし幾たびもためらった。自分はそこまでつき詰めているが、武蔵の気もちはわからなかった。

「……アアいっそのこと忘れてしまいたい」

青い海が、ふと誘惑でさえあった。朱実は、海を見つめていると、自分が怖くなった。何のためらいもなく、真っ直にそこへ向って駈けて行かれる気がするのである。

そのくせ自分がこんなつき詰めた考えを抱いているなどということは、およそ彼女の養母のお甲も知らない。清十郎も思わない。誰でも朱実と一つに暮した者は皆、この娘は至って快活で、お転婆で、そしてまだ、男性の恋愛が受け取れないほど開花の晩い質だと思いこんでいるらしいのである。

朱実はそんな男たちやまた養母を、心のうちであかの他人に思っていた。どんな冗戯でもいえるのである。そしていつも鈴のついた袂を振って、駄々っ子みたいに振舞っているのだったが、独りになると、春の草いきれのように熱いため息をついていた。