Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme

Aozora Bunko

五

「ふッっ!」

と、頬に溜めていた息を鳴らした。

「あっ……」

武蔵は、婆の体を突き放し、片手を左の眼に当てて飛びのいた。

五

ひとみが何かで焼かれたように熱かった。火の塵でも入ったように痛むのである。

武蔵は、瞼の上を押えていた手を放してみた。手には血しおもついていない。――しかし、左の眼は、開くことも出来なかった。

お杉は、相手の身体にそうした乱れを見つけると、ひどく勝ち誇って、

「南無、かんぜおん菩薩」

と、隙かさず、ふた太刀、三太刀斬りつけて行った。

いささか慌て気味に、武蔵は身を避けて斜めに反った。その時、お杉の太刀が彼の袖裏を透して、二の腕の肱の辺をさっと掠めた。綻びた袂の白い裏地へ血しおが朱く滲んで見えた。

「討ったッ」

狂喜しながら、婆は小太刀をやたらに打ち揮った。根の生えている大木の幹でも伐っているようなつもりで、相手が活動しないでいることは考慮に入れないのである。一念にただ清水寺の観世音菩薩の名を地へ呼び下して、

「南無、南無」

と、うるさく唱えながら、武蔵の前後を駈け廻るのであった。

武蔵は、それに応じて、ただ体を移しているだけだった。