Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
八
――武蔵は気がついて、こういう周囲の物の気配に、思いもしなかった亡母の夢を見たのであろうと思った。そして、懐かしいものと会ったように、その風車へ見入っていた。
八
醒めてもいない、眠ってもいない、そうしたうつつの間に、うす眼を開いて、仰向いていると、武蔵はふと、そこに吊り下げてある風車に、不審を抱いた。
「……?」
風車が廻りだしたのである。
元々、廻るように出来ている風車が、廻り出したのだ、なんの不思議もないはずであるが、武蔵はギクとしたように、夜具の中から身を起しかけ、
「……はてな?」
耳を澄ました。
どこかで、そーと戸の辷る音がする、戸が閉まると、廻っていた風車は、翼をしずめて、またぴたと止まる。
この家の裏口を、先刻から頻りと人が出入りしていた。足の運びにも注意して、ミシリともせぬほど、それは密かなものだったが、戸の開け閉てに入って来るかすかな風は、暖簾をかけてある板の間を通って、ここの風車の糸へすぐひびき、鉋屑で出来ている五色の造花が、途端に蝶の感覚のように、揺れたり、顫いたり、廻ったり、止まったりするのであった。
――起しかけた頭をそっと枕へもどして、武蔵は、この家のうちの空気をじっと体で知ろうとした。