Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
神泉
一
神泉
一
保元物語に見える伊勢武者の平忠清は、この古市の出生とあるが、今は、並木の茶汲み女が、慶長の古市を代表していた。
竹の柱を結い、筵編みの揚蔀に、色褪せた帳など繞らして、並木の松の数ほど白粉の女たちが出ていて、
「寄って行かっしゃれ」
「茶など、あがりゃんせ」
「そこな若衆」
「旅の衆」
往来の旅客をつかまえて、真昼も夜もけじめがなかった。
内宮へ行くには、いやでも口さがない女の群れの眼を浴びたり、袂の用心をしながら歩かなければ行かれない。山田を出た武蔵もまた恐い眉と唇を持って、痛む足をひきずりながら、鈍々と、跛行をひいてここを通った。
「あれ、武者修行さん」
「足をどうなされた」
「癒してあげよ」
「さすってあげよ」
女たちは、通せんぼして、武蔵の袂をとらえ、笠をつかまえ、腕くびをとり、
「そんな恐い顔したらよい男が、だいなしになるがな」
といった。
武蔵は顔をあからめて、物もいい得ずただうろたえた。彼は、こういう敵には何の備えもないようだった。しきりと謝ってばかりいる。その生真面目ないいわけを、女たちはまた、豹の子みたいで可愛らしいといって笑う。そして白い手の暴力はやまないのである。