Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
(気に喰わない山だ)
と、数日、思い積っていたので、その鬱憤をかかえて、一気に、頂へよじ登り、
(これでもか、石舟斎め)
と、土足にかけて、踏みにじってやったら、さだめし、さばさばするだろう。またそれくらいな、自信がつかめなければ、京都の土を踏んで、吉岡方との試合に、どうして勝目があるか。
踏み敷く草も木も氷も、武蔵の足にかかるもの、敵でない物はない。――勝つか負けるか! 一歩一歩が勝敗への呼吸であった。神泉の中で氷化した五体の血が、今は熱泉のように毛穴から湯気を立てていた。
行者ものぼらないという鷲ヶ岳の赤肌へ、武蔵は、抱きついていた。足がかりを捜して、足が岩へかかると、崩れてゆく砂岩が、ふもとの疎林の中で轟いた。
百尺――二百尺――三百尺――武蔵の影はだんだん空へ小さくなって行く。白雲が来てつつみ、白雲が去るたびに、その影は空のものとなっていた。
鷲嶺は巨人のように、彼のすることを冷然と視ていた。
五
蟹が岩へ抱きついたように、武蔵は山の九合目にしがみついていた。
その手でも足でもが、少しでも弛んだせつなには、彼の体は、崩れてゆく岩とともに、墜ちるところまで墜ちて行かなければ止まるまい。