Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
この日の朝から、彼は足の苦痛をほとんど忘れたばかりでなく、体についても、健康を考えないほど健康な気力に充ちていた。それに伴う心の据わり方が違って来たことももちろんであるが、彼自身は、一本の脚の苦熱が癒った事実よりも、今朝抱いている心境が、昨日よりたしかに一日育っていることのほうを、自分でも認め、また、自分へ対しての限りなき欣びとしていた。
つぼ焼やの娘に、革足袋を買わせにやり、新しい草鞋をつけ、彼は足で大地を踏みしめてみた。まだ跛行をひく癖がどこか、抜けないし、多少痛む気もするが、いうに足らない程度である。
「渡舟の者が、呶鳴っておりますがの。旦那は大湊へお越しになるのではございませぬか」
さざえを焼いている老爺に注意されて、
「そうだ。大湊へ渡れば、あれから津へ行く便船が出るはずだな」
「はあ、四日市へでも、桑名へでも」
「おやじ、今日はいったい、年暮の幾日であったかなあ」
「はははは、よいご身分でござらっしゃるの、年暮の日をお忘れか、きょうはもう師走の二十四日でござりますわい」
「まだそんなものか」
「お若い方はうらやましいことを仰っしゃる」
高城の浜の渡船場まで、武蔵は駈けるように歩いた、もっと駈けてみたい気がするのである。