Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
「阿女ッ」
吠えて、その手くびを、梅軒が抑えようとして握ると、そこはもう鯉口を走りかけていた白刃の部分だったので、手を触れたとたんに、梅軒の右手の小指と薬指の二本が弾けるように斬れて血と共に地上へこぼれた。
「――ア痛!」
思わず後の指を抑えて飛び退いたので、自ら鞘を引いたことにもなって、お通の手には水もたまらぬような光が地を曳いてさッと後ろへかくされた。
いやしくも一道に達している宍戸梅軒として、これはゆうべの不覚以上な不覚であった。のッけから女子供と見て呑んでかかったことが重大な原因だったことはいうまでもない。
――しまったと自己の不覚を叱りながら、立直ろうとしたところへ、もうなにも怖くなくなっているお通の手から、野太刀が横へ撲って来たのであった。けれどそれは三尺に近いもので、いわゆる胴田貫という分厚い刃金である。一人前の男でも、そうたやすくは振れない物なので、梅軒に身を交わされると、当然、お通の手は波を描いて、自分の振った刀で自分の体を蹌かせてしまった。
――そして、ごつんと木を斬ったようなひびきを腕に感じると、赤黒い血しおが、顔へかぶって来るようにパッと見えて、彼女は眼が眩むような心地がした。