Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
十三
柘植三之丞に対するお通の気もちがそれだった。
(底のわからない人)
という最初の印象が妨げるせいか、わかれに臨んでも、狼から離れたように、ほっとはしたが、心から礼をいう気にもなれない。
かなり人みしりをしない城太郎さえが、その三之丞とわかれて峠を隔てると、
「いやな奴だね」
と、いった。
きょうの難儀を救われたてまえにも、そういう蔭口はいえない義理であったけれど、お通もつい、
「ほんとにね」
と頷いてしまい、
「いったいなんの意味なんでしょう、おれはまだ独り者だということを覚えていてくれなんて……」
「きっと、お通さんを今に、お嫁にもらいに行くよという謎なんだろ」
「オオいやだ」
それからの二人の旅は至って無事だった。ただ恨みは、近江の湖畔へ出ても、瀬田の唐橋を渡っても、また逢坂の関を越えても、とうとう武蔵の消息はわからないでしまったことである。
年暮の京都にはもう門松が立っていた。
待つ春の町飾りを見ると、お通は先に逸した機会をかなしむよりも、次の機会に希望をもった。
五条橋のたもと。
一月一日の朝。
もし、その朝でなければ、二日――三日――四日と七種までの朝ごとに。