Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

元々、父と高瀬氏とは、共に横浜の開港的な企業の夢の中でむすびあい、年輩も地位も、高瀬氏の方がはるかに父より先輩ではあったが、いわば刎頸の仲といってよい間柄であった。

それが一朝にして、ばかな訴訟をやり出した遠因は、もちろん会社の不況にあったろうが、高瀬氏に与する人々と、父をけしかける一部と、当人以外の応援や弁護人側の対立にもなって、退くに退けないかたちを拵えてしまったものらしい。もっとも、父の放漫なやり口や花柳界における遊び方は、いくら外人相手の商策上の必要もあったといえ、ひとの目に余るものがあったにちがいない。それにまた父の腹には「創業からきょうまで、この会社をこれまでにしたのは自分だ」という覇気もあり、大部分の出資をもつ高瀬氏をつい無きかの如く振舞ってきたのでもあるまいか。

とにかく高瀬氏の不満と不信をうくることになって、経理面の疑義や数字の指摘となり、それが両者の衝突となったのだった。しかし、その程度の揉め事なら、何も会社をつぶしてまで、両者が法廷で争うほどの事もなかったろうに、当初、冷静な高瀬氏と、覇気のつよいぼくの父とが、その問題で口論となったさい、突然、父がテーブル越しに拳固で高瀬氏を撲りつけたという一事件があったのである。