Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
父はぼくが早くからこんな物になずんでいて、また欲しがっていたのを知っていたのだ。どうかした拍子でぼくを憎しげに「穀つぶし」と呶鳴ったりする事も、病気と貧苦のせいだったのだ、父も遠く離れればやはりぼくを愛しく思い出してはいてくれるのか。そんな感激もあわせて胸につつみながら、当時のホトトギスを、夜更けるまで読みつつ寝たことは、ぼくの夢を少年の夢そのまま毎晩、のどかにしてくれた。
和平どんは、いつも人気者だが、悪ふざけの度を越す人でもあった。或る晩、店を閉めた後、店員たちが大いに酔った。主人夫妻は不在であった。ぼくは和平どんに呼ばれて奥へ行った。すると、大勢の中でいきなり蒲団にくるまれた。おなじ蒲団の中へ又、支店の女中のお弓さんを一しょにくるんだ。「手を貸せ、手を貸せ」とほかの者を呼び、和平どんは帯か何かでぼくとお弓さんを蒲団巻きにした。
もちろん、ぼくとお弓さんも、極力抵抗はしたが及ばなかったのである。上をギリギリ巻き締められているのでお弓さんの両手はぼくを抱えていた。ぼくは手のやり場がなく、顔は火照ッてしまい、ただ眼をつぶっていた。
和平どんは、酒宴の同僚たちへ、この余興を提供しながら、ぼくらを肴に、自分も飲んでいるのだろう。