Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
何かきゃッきゃッと笑いながらお弓さんをからかい抜いた。お弓さんが日頃、英どんにたいして余り好意を持ち過ぎているというやきもちらしかった。もっと露骨な猥せつな言であった。伊東さんが、やっと蒲団蒸しの紐を解いてくれたとき、お弓さんは泣いていた。ぼくは店の隅の暗い所へ逃げこんだ。
又、晩春の頃だった。爺やが風邪で寝ていた為、浦賀造船所へ納めている同地の雑貨店へ、卸し売りの白酒を、荷車に一荷積んで、和平どんが前を曳き、ぼくが後押しして行ったことがある。
浦賀街道の山道までかかると、和平どんは一ぷくしようと云い出し、車を止めて休んだのはいいが、そのうちに「おまえ、店へ帰っても、喋るんじゃないぞ。いいか、途中で壊れたと云っとくんだから」と云って、四打入りの箱をコジ開け、中の白酒を二本ほどラッパ飲みにしてしまった。そして残りをぼくにくれた。
ぼくは眼がくらくらし出した。いや、それどころではなく、和平どんはすっかり酩酊してしまい、それからの峠の下りを何べんも転びかけた。また崖へ車をぶつけたりして、あと白酒のビンを何本も破り、白酒を道々撒いて歩いた。どうなる事かと、ぼくは尾いて行くばかりであり、あんなに困った事もないが、面白かった事もない。