Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのかお
悪魔の顔
野村 胡堂
Lesen Sie 悪魔の顔 (あくまのかお) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.677 Zeichen · 29 Bildschirme
「チョコレートは、今日の午前にお嬢さんが竹屋から買って来て上げたのだそうだ」
話は次第に具体的になります。最後に、
「お嬢さんは身体が弱いので、酒井博士から亜砒酸の丸薬を貰って呑んで居るそうだ」
この恐ろしい話を背に聞かせて、千種十次郎は廊下に出て居りました。あの月見草のように淋しく美しい美保子が、どんな事情があったにしろ、父親を殺す気になろうとは思えません。
「そんな馬鹿な事が――」
と打消す下から、物々しい噂が、誰が伝えるともなく、次第に具体的に、後から後から客間へ伝わります。
折柄、飛ぶように階段を降りる人影、サッと十次郎の前に立ったのを見ると、蒼白い顔を少し亢奮させて、ワクワク顫えて居る美保子。
「千種さん、どうしましょう、私は怖い、怖い」
何んと言う事でしょう。蝋のような頬を恐怖に痙攣らせて、眼ばかり異様に輝やく娘は、精も根も尽き果てたように、千種十次郎の胸にすがり付きます。
「美保子さんどうしたんです、エ、エ?」
「私は恐い、何んにもわからないんです」
父親の不意の死や、自分に降りかかる恐ろしい疑いなどに顛倒して、娘は物を言うことも出来ません。