Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「あい――」
京弥が造り声色をしながら、したたるばかりのしなをみせつつ艶に答えたのをきくと、供侍が提灯をさしつけてきき尋ねました。
「目なし小路へ参るのでござりまするが、どこでござりましょうな」
――途端! それが常套手段の一つでもあるとみえて、近づいた供侍の合図と共に、ぐるぐると他の七八名が、案の定浚いとるべく京弥の身辺を取り巻きましたので、こちらの二人が等しく目を瞠ったとき――だが、この薄萠黄色お高僧頭巾の艶なる女が、もはや説明の要もない位に少しばかり手強い京弥です。六日前から、そうあるべき事を待ちあぐんでいた矢先でしたから、ひらひらと緋色の裾端を空に散らすと、ぱたり、ぱたりと得意の揚心流当て身で、先ずその両三名をのけぞらしました。
それと見て、手間かかってはと思ったに違いない。――駕籠の垂れを排してそこに姿を見せたものは、それも百化け中のうちにある変装の一つと見えて、巧みにつくった大名姿の十吉です。
「面倒な!」
と言うように猿臂を伸ばして、京弥の背に手を廻そうとしたのを、体を沈めて素早く腰車にかけると、もんどり打たして笑止なる化け大名をとって投げました。