Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
青い野菜は露の中に浮んでいた。灸は自分の小さい箸をとった。が、二階の女の子のことを思い出すと彼は箸を置いて口を母親の方へ差し出した。
「何によ。」と母は訊いて灸の口を眺めていた。
「御飯。」
「まア、この子ってば!」
「御飯よう。」
「そこにあなたのがあるじゃありませんか。」
母はひとり御飯を食べ始めた。灸は顎をひっ込めて少しふくれたが、直ぐまた黙って箸を持った。彼の椀の中では青い野菜が凋れたまま泣いていた。
三度目に灸が五号の部屋を覗くと、女の子は座蒲団を冠って頭を左右に振っていた。
「お嬢ちゃん。」
灸は廊下の外から呼んでみた。
「お這入りなさいな。」と、婦人はいった。
灸は部屋の中へ這入ると暫く明けた障子に手をかけて立っていた。女の子は彼の傍へ寄って来て、
「アッ、アッ。」といいながら座蒲団を灸の胸へ押しつけた。
灸は座蒲団を受けとると女の子のしていたようにそれを頭へ冠ってみた。
「エヘエヘエヘエヘ。」と女の子は笑った。
灸は頭を振り始めた。顔を顰めて舌を出した。それから眼をむいて頭を振った。
女の子の笑い声は高くなった。灸はそのままころりと横になると女の子の足元の方へ転がった。