Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
米は今日は膝の上へ乗れないと思ったが、障子を開けると直ぐ叔父はニコニコした。
「鑵詰、牛肉のや今日は。」
米がそういうと叔父は笑いながら立って鑵詰棚へ手を延ばして「どうしたのや、先生が来たんやな。」といった。
米は家の庭にあった畳のような下駄は刺繍の先生のだなと思った。「どうや知らん。」と答えた。
叔父は鑵詰の口を開けながら風呂(ふろ)へ入れてやろうかといった。米は「やめや。」といった。すると叔父は突然、「どうや米、お前先生とお父(とっ)つァんとどっちが好きや、うん。」と訊(き)いた。
「知らんわい。」
米は仰向(あおむ)きになった叔父の膝の上へ寝そべってそういった、そして叔父の鼻の孔(あな)は何(な)ぜ黒いのだろうと考えた。
「知らん、阿呆なこといえ、お父つァんはもう嫁さん貰(もろ)うてござるぞ、どうする、ん?」と叔父は覗き込んだ。
米は腹を波形に動かして「ちがうわい、ちがうわい。」といった。しかし叔父のいう事は真実のように思われて、もう父は帰って来ないような気がして来た。母とさえ一緒にいる事が出来れば父の帰って来る来ないはそう心にかからなかった。