Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
すると、黙って叔父の手の皮膚を摘(つ)まみ上(あ)げていた彼は急に母が昨夜男と寝た事を自分が知っているのを気使って自分の留守に死んでいはすまいかと思われた。その中(うち)に涙が出て来た。で、草履を周章(あわ)ててはいて黙って帰ろうとすると、叔父は「何んじゃ米。」といった。けれど彼はやはり黙って表へ出ると馳け出した。
家へ帰った時母は鑵詰を米から受け取って「お前まアこの間着返(きが)えた着物やないか。」
と睥(にら)んだ。彼の着物の胸から腹へかけて鑵詰の汁が飛白(かすり)の白い部分を汚していた。
母が自分を見たなら抱いてくれるとばかり思っていた米は何(な)ぜだか急に他家の母の傍にいるような気がした。そして、身体をあちこちに廻しながら物を踏(ふ)み蹂(にじ)るような格好をして母を見い見い外へ出て行こうとした。「通(かよ)いは?」と母が訊いた。米は忘れて来たのを知ったが悲しくなって来たので黙って表へ出た。しかし、直ぐ金剛石のことを思い出すと裏へ廻って行って、夕闇(ゆうやみ)の迫った葉蘭(はらん)の傍へ蹲(うずくま)って、昼間描いておいた小さい円の上を指で些(ち)っと圧(おさ)えてみた。