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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

九時が打つともう米は眠たくなった。奥から母の笑い声が聞えて来た。いつも奥で寝ている彼は、今夜は何処で寝て好いのか知らなかった。すると、また、昨夜眼を醒した時の母と男との囁(ささや)きを思い出した。そして、学校の帰り道に石橋の上へ書いた楽書(らくがき)を消したかどうかと気がかりになって来た。それは消したようでもあるし消さないようにも思われた。

母が奥から出て来たとき、

「何処で寝るの。」

と米は訊いた。

「アそうそ、お前もう眠な。」

母はそういうと直ぐ奥へ引き返して行った。そして奥の間で「些(ち)っと失礼します。」といって蒲団(ふとん)を米の横へ持って出て来てから、楕円形の提灯(ちょうちん)に火を照(つ)けた。蝋燭(ろうそく)は四寸(すん)ほどもあった。

「お前提灯持って二階へお上り。」

と母はいった。子が階段を昇ると母はその後から蒲団を擁(かか)えて昇った。

母が蒲団を敷いている間、子は灯(ひ)が消えないように提灯をさげていた。「お母さんも寝な恐(こ)わい。」と子はいった。

「直ぐ来るえ。直(じ)っきや。」と母はいった。子はそれきり何ともいわなかった。