Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
どうしてこう幾度画いても帽子(ぼうし)が小さくなるのだろうと苦しんだ。
奥から餉台や汚れた食器が台所へ帰って来た。鑵詰の牛肉はもう皿の上から消えていた。米は牛肉をどうしたかと母に訊ねたかったが、そのことを奥の客に聞かれては羞(はずか)しいと思った。そして、間もなく母は再び客に奪われた。
米はあきらめて黙って紙石盤(かみせきばん)を出して来ると腹這(はらば)いになって画をかき始めた。一頁に一つずつ先ず前の軍人から始めて二枚目に糞(くそ)を落している馬を描いた。しかし、馬の尾を高く上げていいかどうかと迷わされた。そして、結局、細い勢の好い滝のような曲った尾を付けて納得した。次には姉の顔を画いた。下頬(したほお)の膨らんだ円い輪廓(りんかく)を幾度も画き直してから眼鼻をつけて最後に鼻柱の真中へ黒子(ほくろ)を一つ打った。そうして出来上った南瓜(かぼちゃ)のような顔の横へ「ネーサンノカオ」と書いておいた。その顔を眺めていると、姉の黒子は黒いが画の方は白いと気が付いた。そして、それを黒くすると姉の顔に一層似つかわしくなるであろうと考えたけれどどうすれば黒くなるかという方法が分らなかったのでそのままにしておいた。