Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
御身
御身
横光利一
一
末雄が本を見ていると母が尺(さし)を持って上って来た。
「お前その着物をまだ着るかね。」
「まだ着られるでしょう。」
彼は自分の胸のあたりを見て、
「何(な)ぜ?」と訊(き)き返(かえ)すと、母はやはり彼の着物を眺めながら、
「赤子(あか)のお襁褓(むつ)にしようかと思うて。」と答えた。
「赤子って誰の?」
「姉さんに赤子が出来るのや。」母は何(な)ぜだか普通の顔をしていった。
彼は姉にそんなことがあるのかと思うと、何ぜか顔が赧(あか)らんだ。しかし、全く嬉しくなった。
「ほんとうか?」
「もうその着物いらんやろ。代りのを作(こし)らえてあげるで解(ほど)こうな。」
「ほんとうに出来るのか。」
母は答えずにそのまま下へ降りてしまった。彼はちょっと腹が立った。が、その腹立たしさの中から微笑がはみ出るように浮んで来た。いくら顔をひき締めてみても駄目だった。
彼と姉とは二人姉弟(きょうだい)で、姉は六年前に人妻になっていた。それにまだ子供は一人もなかった。
二
晴れた日、彼は山を越して姉のおりかの家へ行った。赤子のことを訊(き)くのが羞(はずか)しかったので黙って時々気付かれぬように姉の帯の下を見た。