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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

「行こう行こう。」

彼が姉の手を持ってもとの所へ戻ろうとすると、姉は未練そうに後を見返りながら、

「もうじき綺麗(きれい)な花が咲くえ。あれ餅躑躅(もちつつじ)え。葉がねばねばするわ。ああしんど。」といった。

彼は姉の下腹を窺(うかが)った。躑躅をひくときの姉の様子を浮かべると、肱で子供が潰(つぶ)されていそうに思えてならなかった。しかし、それをどうして吟味(ぎんみ)してよいものか分らなかった。姉に訊いてみることも羞しくて出来ないし、これは困ったことになったと彼は思った。

姉は足もとの処でまた一本小さな躑躅を見つけると、

「末っちゃん、これなら引けるえ。」といってその方へ寄りかけた。

「うるさい。」と彼は叱った。

「たまに来たのに一本ぐらい引いて帰らにゃもったいない。」

「もう帰るんだ。」

「もう帰るん?」姉は彼の顔を見ると、

「何アんじゃ。」といって笑い出した。

彼は黙ってさきになって歩いた。実際彼には姉の腹のことがひどく気になり出した。もうそれ以上遊ぶ気がしなくなった。

「お腹すかないか。」

と彼は不意に姉に訊いてみた。空(す)いていると答えれば、幾分か肱で腹の子供を押し潰したそれだけ空いているのだとそんな他愛もない考えから訊いたのだが、姉は空かないと答えた。