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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし、長羅の頭首は重く黙って横に振られた。彼の眼の向けられた彼方では、松明の一塊が火串の藤蔓を焼き切って、赤々と草の上へ崩れ落ちた。一疋の鹿は飛び上った。そうして、踊の中へ角を傾けて馳け込んだ。

「父よ、我は臥所を欲する。我を赦せ。」

長羅は一人立ち上って櫓を降りた。彼は人波の後をぬけ、神庫の前を通って暗い櫟の下まで来かかった。そのとき、踊りの群から脱け出した一人の女が、彼の後から馳けて来た。彼女は大夫の若い妻であった。

「待て、王子よ。」と彼女はいった。

長羅は立ち停って後を向いた。

「我は爾の帰るを、月と星とに祈っていた。」

長羅は黙って再び母屋の方へ歩いていった。

「待て、王子よ、我は夜の来る度に爾の夢を見た。」

しかし、長羅の足はとまらなかった。

「ああ、王子よ。爾は我に言葉をかけよ。爾はわれを森へ伴なえ。我は我の祈りのために、再び爾を櫓の上で見た。」

そのとき、二人の後から一人の足音が馳けて来た。それは女の良人の痩せ細った若い大夫であった。彼は蒼ざめた顔をして慄えながら長羅にいった。

「王子よ、女は我の妻である。願くば妻を斬れ。」

長羅は黙って母屋の踏段に足をかけた。