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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

十五

間もなく、濃霧は松明の光りをその中にぼかしながら、倒れた芒の原の上から静にだんだんと訶和郎の周囲へ流れて来た。

十五

耶馬台の兵士たちが彼らの宮へ帰ったとき、卑弥呼はひとり捕虜の宿舎にあてられる石窖の中に入れられた。それは幸運な他国の旅人に与えられる耶馬台の国の習慣の一つであった。彼女の石窖は奥深い石灰洞から成っていた。数本の鍾乳石の柱は、襞打つ高い天井の岩壁から下っていた。そうして、僅かに開けられた正方形の石の入口には、太い欅の格子が降され、その前には、背中と胸とに無数の細い蜥蜴の絵でもって、大きな一つの蜥蜴を刺青した一人の奴隷がつけられていた。彼の頭は嫁菜の汁で染められた藍色の苧の布を巻きつけ、腰には継ぎ合した鼬の皮が纏われていた。

卑弥呼は兵士たちに押し込められたまま乾草の上へ顔を伏せて倒れていた。夜は更けた。兵士たちのさざめく声は、彼らの疲労と睡けのために耶馬台の宮から鎮まった。そうして、森からは霧を透して梟と狐の声が石窖の中へ聞えて来た。かつて、卑弥呼が森の中で卑狗の大兄の腕に抱かれて梟の声を真似たのは、過ぎた平和な日の一夜であった。かつて、彼女が訶和郎の腕の中で狐の声を聞いたのは、過ぎた数日前の夜であった。