Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
三
三
十右衛門は急いで箸をとったが、半七は碌々に飯を食わなかった。彼は熱いのをもう一本持って来てくれと女中に頼んだ。
「親分はよっぽど召し上がりますか」と、十右衛門は訊いた。
「いいえ、野暮な人間ですからさっぱり飲けないんです。だが、きょうは少し飲みましょうよ。顔でも紅くしていねえと景気が付きませんや」と、半七はにやにや笑っていた。
十右衛門は妙な顔をして黙ってしまった。
女中が持って来た一本の徳利を半七は手酌でつづけて飲み干した。南に日をうけた暖い座敷で真昼に酒をのみ過したので、半七の顔も手足も歳の市で売る飾りの海老のように真っ紅になった。
「どうです。渋っ紙は好い加減に染まりましたか」と、半七は熱い頬を撫でた。
「はい、好い色におなりでございます」と、十右衛門は仕方なしに笑っていた。
そうして、こんなに酔っている男を和泉屋へ案内するのは、なんだか心許ないようにも思ったらしいが、今更ことわるわけにも行かないので、かれは勘定を払って半七を表へ連れ出した。半七の足もとは少し乱れて、向うから鮭をさげて来る小僧に危く突き当りそうになった。
「親分。大丈夫ですか」
十右衛門に手を取られて半七はよろけながら歩いた。