Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
はただ遠いほうから眺めているばかりで、たれも進んでその帯の正体を見とどける者がなかった。
そのうちに尾州家から侍が二、三人出て来た。かれらは袴の股立ちを取って、この泥ぶかい岸に降り立って、疑問の帯をずるずると手繰りあげたが、帯は別に不思議の働きをも見せないで、濡れた尾をひき摺りながら明るい春の日の下にさらされた。帯は池の主ではなかった。やはり普通の若い女が締める派手な帯で、青と紅とむらさきと三段に染め分けた縮緬地に麻の葉模様が白く絞り出されてあった。
「誰がこんなところへ捨てて行ったんだろう」
それが第二の疑問であった。帯はまだ新しい綺麗なもので、この時代でも売れば相当の値になるものを、誰が惜し気もなく投げ込んで行ったものか、それに就いてはいろいろの想像説があらわれた。ある者は盗賊の仕業であろうと云った。盗賊がどこからか盗み出して来たのを、邪魔になるので捨てたのか、或いは後の証拠になるのを恐れて捨てたのか、おそらく二つに一つであろうとのことであった。又ある者は誰かの悪戯であろうと云った。ここが帯取りの池ということを承知の上で、世間の人を騒がすためにわざとこんな帯を投げ込んだものであろうとのことであった。