Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
すがられた半七もほろりとした。町内で札付きのいたずら小僧も、その小さい心の底にはこうした美しい、いじらしい人情がひそんでいるのであった。
「よし、よし、そんなら兄貴は堪忍してやる」と、半七は優しく云った。「今の話はおれ一人が聴いただけにして置いて、だれにも云わねえ。その代りに俺の云うことを何でも肯くか」
相手の返事は聞くまでもなかった。権太郎は無論なんでも肯くと誓うように云った。半七は彼の耳に口をよせて何事かをささやくと、権太郎はうなずいてすぐに出て行った。
霰は又ひとしきり降って止んだが、雲はいよいよ低くなって、一種の寒い影が地面へ掩いかぶさって来た。昼でもどこの家も静まりかえっていた。掃溜めをあさりに来る犬もきょうは姿を見せなかった。空家を忍んで出た権太郎は、ぬき足をして稲荷の社のまえに行って、袂から鞴祭りの蜜柑を五つ六つ出した。彼は木連格子のあいだからそれをそっと転がし込んで、自分は土のうえに平蜘蛛のように俯伏していた。彼は一生懸命に息を殺していた。
半七は空家に腰をかけてしばらく待っていたが、権太郎からは何の報告もないので、彼は待ちあぐんでそっと出て行った。