Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

どうしてこうしてと、微細に話すのを、黙って聞いていた坑夫は、僕に向って「俺が一番ほしいのは山の渓流の水だ」といった。突然ポッツリ口を切ると、後はまったく山の渓流のように喋り出すのが、この男である。この時も山の水の讃美――僕も山に登った経験があるので、水の美味はよく知っている――から始めて、若い時、ウェスト・ヴァージニアに拳銃を持ちこんでどうとかしたということまで、一生懸命に話して聞かせた。「どうとかした……」は頼りないが、話に夢中になると恐ろしく早口になり、訛がまざって、僕にはよく分らぬことがあるのだった。

彼に最後に会ったのは、仮収容所が閉鎖される前日だった。例の事務所へ行くと、丁度居合わせて、今日郵便が届いてワイフからこんなに沢山手紙が来たといい、五、六通の航空便を見せた。「いよいよ君ともグッドバイらしい」というと、上衣やズボンのポケットに手を入れて、しきりに物をさがしていたが、最後にシャープ鉛筆の尻をひねって何本かの芯を取出し、「何も無いからこれをお前にやる」といった。いかにもブッキラ棒ないいようだったが、それだけに僕は感動させられた。だが、僕のは極めて旧式なシャープで、芯の太さがあわないのである。