Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
その時この蠢くものが、ぱっと消えて、大きな天井から、遥かの谷底まで一度に暗くなった。今まで何千となくいならんでいたものは闇の中に葬られたぎり、誰あって声を立てるものがない。あたかもこの大きな闇に、一人残らずその存在を打ち消されて、影も形もなくなったかのごとくに寂としている。と、思うと、遥かの底の、正面の一部分が四角に切り抜かれて、闇の中から浮き出したように、ぼうっといつの間にやら薄明るくなって来た。始めは、ただ闇の段取が違うだけの事と思っていると、それがしだいしだいに暗がりを離れてくる。たしかに柔かな光を受けておるなと意識できるぐらいになった時、自分は霧のような光線の奥に、不透明な色を見出す事ができた。その色は黄と紫と藍であった。やがて、そのうちの黄と紫が動き出した。自分は両眼の視神経を疲れるまで緊張して、この動くものを瞬きもせず凝視ていた。靄は眼の底からたちまち晴れ渡った。遠くの向うに、明かな日光の暖かに照り輝く海を控えて、黄な上衣を着た美しい男と、紫の袖を長く牽いた美しい女が、青草の上に、判然あらわれて来た。女が橄欖の樹の下に据えてある大理石の長椅子に腰をかけた時に、男は椅子の横手に立って、上から女を見下した。