Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
泥棒
泥棒
寝ようと思って次の間へ出ると、炬燵の臭がぷんとした。厠の帰りに、火が強過ぎるようだから、気をつけなくてはいけないと妻に注意して、自分の部屋へ引取った。もう十一時を過ぎている。床の中の夢は常のごとく安らかであった。寒い割に風も吹かず、半鐘の音も耳に応えなかった。熟睡が時の世界を盛り潰したように正体を失った。
すると忽然として、女の泣声で眼が覚めた。聞けばもよと云う下女の声である。この下女は驚いて狼狽えるといつでも泣声を出す。この間家の赤ん坊を湯に入れた時、赤ん坊が湯気に上って、引きつけたといって五分ばかり泣声を出した。自分がこの下女の異様な声を聞いたのは、それが始めてである。啜り上げるようにして早口に物を云う。訴えるような、口説くような、詫を入れるような、情人の死を悲しむような――とうてい普通の驚愕の場合に出る、鋭くって短い感投詞の調子ではない。
自分は今云う通りこの異様の声で、眼が覚めた。声はたしかに妻の寝ている、次の部屋から出る。同時に襖を洩れて赤い火がさっと暗い書斎に射した。今開ける瞼の裏に、この光が届くや否や自分は火事だと合点して飛び起きた。