Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
長い石段の途中に太い樅が静かな枝を夜に張って、土手から高く聳えている。火はその後から起る。黒い幹と動かぬ枝をことさらに残して、余る所は真赤である。火元はこの高い土手の上に違ない。もう一町ほど行って左へ坂を上れば、現場へ出られる。
また急ぎ足に歩き出した。後から来るものは皆追越して行く。中には擦れ違に大きな声をかけるものがある。暗い路は自ずと神経的に活きて来た。坂の下まで歩いて、いよいよ上ろうとすると、胸を突くほど急である。その急な傾斜を、人の頭がいっぱいに埋めて、上から下まで犇いている。焔は坂の真上から容赦なく舞い上る。この人の渦に捲かれて、坂の上まで押し上げられたら、踵を回らすうちに焦げてしまいそうである。
もう半町ほど行くと、同じく左へ折れる大きな坂がある。上るならこちらが楽で安全であると思い直して、出合頭の人を煩わしく避けて、ようやく曲り角まで出ると、向うから劇しく号鈴を鳴らして蒸汽喞筒が来た。退かぬものはことごとく敷き殺すぞと云わぬばかりに人込の中を全速力で駆り立てながら、高い蹄の音と共に、馬の鼻面を坂の方へ一捻に向直した。馬は泡を吹いた口を咽喉に摺りつけて、尖った耳を前に立てたが、いきなり前足を揃えてもろに飛び出した。