Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
それでも瞬もせずに、水際まで浸った叔父さんの手首の動くのを待っていた。けれどもそれがなかなかに動かない。
雨脚はしだいに黒くなる。河の色はだんだん重くなる。渦の紋は劇しく水上から回って来る。この時どす黒い波が鋭く眼の前を通り過そうとする中に、ちらりと色の変った模様が見えた。瞬を容さぬとっさの光を受けたその模様には長さの感じがあった。これは大きな鰻だなと思った。
途端に流れに逆らって、網の柄を握っていた叔父さんの右の手首が、蓑の下から肩の上まで弾ね返るように動いた。続いて長いものが叔父さんの手を離れた。それが暗い雨のふりしきる中に、重たい縄のような曲線を描いて、向うの土手の上に落ちた。と思うと、草の中からむくりと鎌首を一尺ばかり持上げた。そうして持上げたまま屹と二人を見た。
「覚えていろ」
声はたしかに叔父さんの声であった。同時に鎌首は草の中に消えた。叔父さんは蒼い顔をして、蛇を投げた所を見ている。
「叔父さん、今、覚えていろと云ったのはあなたですか」
叔父さんはようやくこっちを向いた。そうして低い声で、誰だかよく分らないと答えた。今でも叔父にこの話をするたびに、誰だかよく分らないと答えては妙な顔をする。