Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
「あなたは、作家だってね、そんなら聞いてもらいたいことがあるんだ」
といってぼくらの前に飛び出して来た。そしてケースのチャックを引っ張るとガリ版のパンフレットだの原稿綴じみたいな物を展開して、穏田の飯野吉三郎先生とかの衣鉢をうけたような話から喋々と説き初め「ひとつ、読んでください」と、世直し運動宣言のガリ版刷りをくれた。漁村製の戦後派娘は、あっ気にとられているぼくらを見て、「これよ、これよ」と、自分の頭を人さし指で突っつきながら横目で笑っている。ハハアとこっちもうなずかれた。けれど伊勢の宮柱のある志摩の国だけにこういう人を見るのはなんだか皮肉である。あるいはかつての神風が地元だけに他地方よりは一倍強烈だった惨害によるものだろうか。なにしろ不愍な気もちと、おかしさを禁じえなかったが、その間に島から汽艇が来た。海上わずか十五分で賢島へ着く。真珠翁の御木本おじいさんが鎮座まします島である。
どうも、埠頭で接した小劇場の一場面的な印象があって、その頭でおじいさんに会ったのはいけなかった。真珠工場はさまでな施設とも見えなかったが、おじいさんの住居は思ったより高い丘の中腹にあり、登ってゆくのに息がきれる。