Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
新・平家今昔紀行
伊勢から熊野路の巻
隣のボックスにいた舟橋聖一氏が望遠鏡を手にふといった。
「新・平家物語、まだつづくの」「つづく」「ああいった史料、どう」「どうって」「何から索くの」「保元や平治は、まとまったものもあるけれど、ま、公卿日記だね」「公卿日記」「兼実の玉葉とか、左記、右記、百錬抄、山槐記といったようなもの。それと平安朝随筆の著聞集、今昔、愚管抄なんか。あるね、あることは。けれど日記がいちばんさ。大事な日の天候まで分かっているし」
――そんな遠くの過去を話しながら、ぼくたちはレンズを通して馬場の二千メートル標識のスタートに就きかけている紅、白、紫、黄とりどりな騎手の影に眼をこらしていた。そしてぼくらは一瞬のギャンブルに賭けた馬券をみなポケットに入れて固唾をのんでいる。
しかし、このレース時間一分何秒ノ一の一瞬間にさえ、過去、現在、未来がある。喜憂こもごもが一埃りのうちに舞い去り舞い来り、現実の夢はみな枯葉片々たる紙クズになって飛んでゆく。――これをそのまま七、八百年前の過去へと、想像のヒルムを逆回転させると、平安朝ごろにも盛んだった加茂競馬や神泉苑の競べ馬を、今に観ることはむずかしくはない。