Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
と訊くと、この辺から龍神ノ湯、大台ヶ原、高野あたりまでを、中学一、二年のころに歩いたことがあるという。爾来、歩く旅では人後に落ちない無数の体験をもっているらしいのだ。どうも、このさい語るに足らない道づれだった。しかし、Kさん、Oさんあたりは、そろそろぼくに近い呼吸ひっぱくを洩らし始める。「えらいですな」「いや、驚きですな、じっさい」「どうなるんでしょう」これは女性的なOさんの声である。ぼくもまねして「どうなるんでしょう」Kさん言下に、「どうもなりませんよ、歩くんですな」するとたれかが「これですね、猪を食ったむくいというのは」――みんな笑った、ぼくも笑う。肌着の毛のシャツに、汗が流れているのを覚える。そのくせ、氷点下の山の気温と、この雨。おかしいとは、苦しいことである。
プロペラ船、二十分も、ぼくらを待っていてくれた由。ほかにお客は少なかったからまあよかったようなもの。
宮井からは、その日、船便なし。降りてバスに乗りかえる。熊野川西岸を、数十キロ、このバス、よく事故がないような車体も車体、道も道。毎日、このはこの中を職場としている運転手君と車掌嬢の生活を思いやらずにはいられない。