Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
思えば、ここの御亭主も、亜細亜の壇ノ浦から山へ隠れこんだ一人にはちがいない。今様な落人殿に会ったとすれば、この半日も、むだでもなかったかと強いて思う。
二日目。快晴。
早暁の一番電車で、杉山局長だけ早帰京出社とのこと。あたま数、一人減る。
朝食の膳を並べながら、きのう聞いた“栗山噺し”が話題にわく。平家の名ごりにや、栗山にはなお原始恋愛的な遺風を存すとのことである。朝飯からの性愛討議などは、旅なればこそ、旅なればこそ。
七時十分、宿を出る。乗物は三十何年型のフォード。運転手君は五十ぢかい人、おなじく三十何年型の制服。姓名は、山下亀三君。
「もう二十年ほど勤めていますが、山王越えして、会津街道をゆくのは、今日で、三度目ぐらいです」と、この人がいう。もって、これから出かける鬼怒川上流から会津越えの嶮と不便さは想像に難くない。
はやくも車中不安の色濃く「危険はない?」「何時間」「何キロ」などと質疑応答しきりである。けれど、山下君の姿勢をうしろから見て、ぼくは山下君とおなじ安泰感をもった。教養よろしき運転手君というものは、自然“信頼できる背なか”というものを備えている。